SLAPSTICKS
2003年 1/31〜2/16 PARCO劇場(東京公演)
2003年 2/26〜3/2 シアタードラマシティ(大阪公演)


**オダビリー観劇レポ**

俳優養成学校で経験しているらしいけども、今回はオダギリ初主演の初の本格的な舞台って事で 楽しみにしつつも実はドキドキして待っていたSLAPSTICKS。 私もちゃんとこういう舞台を見るのは初めてなので、専門的な事もわからないけども、ここはファンのキモチで 素直に(しかも甘いかも〜)レポなぞさせてもらいたいと思う次第でございます〜。


さて今回の舞台。舞台装置もシンプルで、ほとんどセットと言ったら、イスと机、そして舞台を平行に横切るいくつかの黒幕。 この黒幕が交差して、舞台を現在過去の時間や場所さえも超越した空間をつくり出していてスゴイ。
また舞台の合間合間にサイレント映画が上映されて、その頃の本当の体をはった映像が見れる構成も面白いんですよね。 (ちょっと映画が長いかなって思う部分もありましたけど、そこはケラさんのサイレント映画へのリスペクトって事で。)
オダギリが演じるのが、若き頃のビリーで、20年後のビリーを山崎一さんが演じてらして、 明らかに背格好も顔も(笑)違うのだけど、お芝居を見てると違和感がなくて、役者さんてすごいと改めて思いましたヨ。

◆◆◆まだトーキー映画が出現する前、サイレントコメディ映画の時代のドタバタな撮影現場。
本当はコメディアン志望だけど、とりあえず撮影現場に潜り込めばなんとかなるだろうと、助監督として働くビリー。 『笑い』の為には何でもやる文字どおり命がけのパワフルな世界。。
その時代にビリーが大好きだったのが、太った巨体でありながら軽やかな身のこなしで大人気のコメディアン、 ロスコーアーバックル。
が、ある日の事件をきっかけに、アーバックルは映画界を追われ。。。
17年たち、既にサイレントコメディは過去の遺物となり、トーキー映画の時代。 尚もアーバックルの映画の排斥運動が続く中、映画配給会社のデニーにリバイバル上映をしてもらうべく 過去の想い出と事件の事を話しつつ必死に説得する山崎ビリー。
若い頃のオダビリーと、オジサンになった山崎ビリーの時代が交錯し乍ら、ビリーの切ないアリスとの恋や、 当時の映画にかけた人たちの想いがジンワリと心にしみてくる物語です。◆◆◆


1/31初日 [PARCO劇場]。
いやー、前日から遠足前の子供のように、眠れなかったファンも多かった事でしょう。 本人はどうだったのかな。案外ぐっすり寝てそうですが(笑)
 照明が消えて、いよいよかと心臓バクバクになってましたが、舞台に登場したのは住田さん(デニー)と山崎さん(ビリー)で少しホッ(笑)
んが、いよいよオダギリ@ビリーがカチンコを持って登場した時には、どうも会場もカチンコチン(ベタ)になったような気がしたのは 気のせいでしょーか。その空気も相まって?セリフ噛みオダビリ。イヒャーッ。ココで少しオダギリ笑っちゃったけど 最初にトチった方が案外その後はリラックスできるのかもしれないしネ!(甘い私)。。まぁ、案外噛むのはどの役者さんでもそこは人間ですから 仕方ないワケで。その後のフォローの仕方に、どうもコツというかポイントがあるようですな。後半オダビリはしっかり そのコツを会得した感じ。いや、噛まないに越した事はないんだけどネ!!
 それにしても背筋もピンとしてて、カッコイイす。 ビリーのスタイルも、結構オダギリの好んで着るファッションと違和感もなくて似合う。裾の細めなスラックスから ヒョローっと覗く足首が細っくて、ルパーンな感じ。。(笑)個人的には袖止め(?)したシャツが好きなんで嬉しかったり。
 が、オダビリが登場する度に、胸がキュワーーーッ!体カチーンッ!となるんだよね。3時間もつのか、自分。。
舞台は、オダビリの時代と、山崎ビリーの時代が交差しつつ進みます。

前半は笑いが中心の構成で、ほんっとオダギリファンとしても大好きな場面がたくさん。
ひとりフィルムの編集作業で居残りビリーの前に現れた憧れのメーベル・ノーマンド(金久美子さん)は実はコカインで酔っぱらってて ちょっとビリーに色気からみ。照れくさそうに困り笑いのビリー、得意の母性本能くすぐり系笑顔。。。
マック・セネット(大谷亮介さん)に捨てるようにと託されたコカインを間違って(か?)吸ってしまって、ラリラリになるオダビリーがもう最高。 声はひっくり返るわ、からむわ、寝るわ、はしゃぐわ、踊るわ。。で。
踊り!!噂に聞いてはいたドキドキワクワクの踊りタイムは案外早かった。。。 ラリって見ている夢の中でアリスのピアノに合わせて何時の間にか踊ってるビリー。 ダンスというより、ありゃ『オドリ』。ヒョコンヒョコンふにゃふにゃ。。 初日はお客の前に初お披露目で、どうもオダギリも照れが入ってるくさい(笑) イヤーン、本人が照れてると見てる方はもっと照れるのでございますよ〜。 蘇るデジマガのミケッタダンス、ああやっぱりヘナチョコイぜオダギリダンス。
けどそのヘナチョコ具合が、なんつーかビリーのキャラに合ってて、見てて楽しく脱力しましたとも。 けど身のこなしは軽やかなんだよね。
その後慣れてくるとダンスもバリエーション豊かにオマケアドリブがついてきて、今日の踊りは何かな?て楽しみがあったりして。 スリラー?だったりロボダンスだったり。。
一番好きだったのは、ヴァージニア・ラップのセクシーダンスをまねしてたのがね。とぉっても可愛かったです。 机に手をつくフリをしてお尻フリフリ。。。 ベリキュートだったのに、DVD収録時には何故か「四股踏み」に(泣)それを収録なのかい。。としょんぼりツッコミ。。。
 夢から冷めても、まだクスリが抜け切らなくてメーベルさんにからみまくるビリーのシーンもおかしかったなあー。
「(セネットさんと)やった?」ってしつこくセクハラ質問するし、 大きな声で「コカインやっちゃ駄目だよー」なんて叫んでひっぱたかれ 大人しくなったと思ったら更にハイになって叩き返してはしゃぐ、壊れビリー。
ここまでメチャクチャやってても、憎めないキャラがビリーなわけで、オダギリはやっぱピッタリ合っていた気がするですよ。
 アリスとの想い出のデートシーンは、ビリーのアリスへの恋心がかわいらしくて、微笑ましいのね。
ブロマイド屋で、ふたりしゃがんでアーバックルのブロマイドを見つめる所なんか、ほんとお似合いでカワイイ。 コロコロ笑う天然な少女アリスに、ビリーは翻弄されてるってカンジ。
やがて数年後に、アーバックルの事件の目撃証言をするアリスはすっかり変わっていて、 変わらないビリーとの対比が切ないのだけど。。

 そのアーバックル(古田新太さん)が逮捕されたって所で休憩タイム、後半は前半とうってかわってチョット重い展開。
牢屋の中のアーバックルと、ラジオ放送スタジオと、それを聞いているビリー達が同じステージ上の同じ空間に 仕切りもなく存在していて、これが映画と違う舞台ならではの世界なんだねえ。。
 一緒に仕事をしていたコメディエンヌのキャリーさん(村岡希美さん)が自殺し、棺桶を担いだ人たちと棺桶の中のキャリーさんが、 コメディ映画に関わるにはマジメすぎるビリーを叱咤し嘲笑する幻想的なシーンは物凄い迫力。
オダビリも、声を張り上げ、体全体でそれらに抗う演技が切なくて痛くてたまんないです。
ただ、、せっかくとても良い場面なんだけど、ココではほとんどオダギリは観客に背を向けている状態なのがもったいない。。 ていうか私はオダギリの表情をもっと見たかったのですが。。
笑顔で「皆に笑ってもらえるなら、死んでも本望さ」って言うアーバックル古田さんが、またイイんですよね。。。

 映画の上映を挟んで場面転換すると、さんざ街を彷徨ってやっと食事にありつけたデニーと山崎ビリー。
そこの同じテーブルに昔のビリーと、アリスが座るんですな。 目の前に過去の自分を見ているのが未来の山崎ビリーだけじゃなくて、デニーも見てる。 こういう不思議な空間が、自然と受け入れられてしまうってスゴイ。。。


 先のラジオでアーバックルに不利な証言をしたアリスに、法廷で発言しないように説得するものの、 自分の認識の甘さを指摘され、さらにアリスが既に結婚している事を知らされ、失恋まで決定しちゃって凹むビリー。
ここでの説得シーンのオダギリが、回を追うごとに素晴らしくなっていって、本当イイんですなあ。 アリスへの想いと、アーバックルや映画を愛する純粋な気持ちがヒシヒシと伝わって来てね。 それをじっと愛おしむように見つめる山崎ビリーも、諦めの笑顔と、切ない涙目で、最高です。。
ショックを隠しきれないビリーは、去ろうとするアリスに、それでも笑顔で「見送るよ、でも、ちょっと待ってて」 と言い、トイレに駆け込む。勿論その後の事を知っている山崎ビリーは止めようとするんだけど。。。 走って戻った時にはアリスの姿はなくて、机に一枚、思い出の『アーバックルのブロマイド』が残されていて。 それとアリスの去った方を交互に見つめ、戸惑い葛藤し、やがて諦めて机に突っ伏してしまうオダビリー。 ビリーの心の流れすら感じ取れる細かい演技が胸をしめつけて、もう切ない切ない。
この辺りは、本当に素晴らしくて、思い出すだけでジンワリしちゃうのです。
突っ伏す過去の自分を見つめつつ、その後のてん末を噛み締めるように語る山崎ビリー。
映画なんて、ましてや過去のサイレント映画なんかに興味はなかったのに、 何時の間にかその時代に愛着さえ感じてしまっているデニーはリバイバル上映を承諾してくれ、 何時の間にかオダビリーと山崎ビリーの回りに、懐かしいマックセネットコメディーズの皆が集まり、 昔のアリスがオダビリーにそっとカチンコを渡す。
よーい、スタート!の合図でビリーがカチンコを鳴らして、舞台は幕を閉じるのでした。

カーテンコールで出てくる役者さん達に惜しみ無い拍手を送りつつ、なんだか自分も何年も行き来したような舞台の世界から やっと引き戻ってオダギリに手が痛くなる程拍手したのは言う迄もないデス。。
最初こそ、「オダビリ大丈夫かなっ?」なーんてドキドキしていたのに、途中からは本当すっかり舞台にひきこまれて、 いや本当濃密で素晴らしい3時間でした。
 その後、数回見たのですけど、見る度に明らかにどんどん良くなるオダビリーに驚くやら感激するやら。。
声の出方がまず全然違うのに感心でした。オダギリって割と早口なんだけども、2回目に見た時は、初日に噛んだ例の部分も とっても丁寧に、言葉を噛み締めつつ喋っていて、当たり前ながら、ヘエ。。。と喜び。
声の質も、まったり篭りボイスなのに、多分後ろ迄きちんと届いていたのではないかしら。
 何より、オダギリ本人が舞台を、ビリーという役を、生ものの演技を本当に心から楽しんでいるなあって伝わって来るのですよね。 何度も舞台をこなしているうちに、変な慣れが出ちゃうんじゃ無いかな、なんて、まあ余計な心配も正直あったんですけど 毎回新鮮に大事に演技していたように思えます。(後半、早口気味な時があって、おや?って感じた時もありましたが、 最後に見た楽舞台では、それも治っていて、毎回反省と進歩を繰り返していたのかなあ、と生の舞台のおもしろさやスバラシサを しみじみ感じました。)
 まあしかし、楽日の舞台では、こちらも何だか万感胸に迫り、前半笑いの部分ですら、余りにノビノビ楽しそうにしている オダビリに感動しちゃって笑い乍ら涙が出ちゃったりして、もうワケワカンナイ状態でした。
(この日誕生日だったオダギリは、カーテンコールでケラさんに「誕生日」だってアピールしてもらってました。 お疲れー、&おめでとう、と心の中で叫びつつ拍手喝采の自分でした)
共演された役者さんも素晴らしく、こういうプロフェッショナルな場所で、プロフェッショナルな方に囲まれて 質の高い世界を経験して行けるのは本当ファンとしても嬉しい。
個人的な好みで言っても今回のようなシンプルな舞台はかなりツボだったし。 まさに役者の力次第で舞台の善し悪しも決まってしまうわけでもあるんですもんね。
 にしても、外人の役を日本人が演じるのって、違和感あるかと思いきや、全然ないのもすごいなあー。と。 特にオダギリってば、遠目に見ると本当掘りが深くて鼻が高いので、かなり外人度(笑)高かったです。 ビリーて名前に違和感皆無。まあ、、、ジョーだしねっ。

さてPARCO劇場での舞台は終わったわけですけど間を開けて、もうすぐ大阪公演。
更に成長するオダギリと舞台を楽しみにしつつ。。。
簡単なレポですが今回はこの辺でっ!
(続編もあるかも?)
                                          kyomii 2/24/03
                                          
  イラストは現在舞台の資料がほとんどないので、頼りにならない記憶のもと描いたので、、 イロイロとご了承下さいデス。。



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